ヒーローの闇

その場に留まった先輩K、J

命を燃やすべく、私があれこれしているなか、私は先輩Kに、徐々に違和感を感じ始めていた。

置かれた環境で効率よく、楽に過ごすことに重きを置く先輩Kと、馬が合わなくなってきたのだ。

(「こうだ」と思うと、それしか見えなくなる私は、先輩Kとの関係を、無碍にしてしまうこともあった。何度も助けてくれたのに、申し訳なかったと今では思う。ごめんなさい。)

また日々を過ごすうち、先輩Kも年を重ねたことや、仲の良い仲間も変化を求め仕事を辞めていったり、結婚等で飲み会メンバーも集まりにくくなったからか

少しずつ元気がなくなってきており、そして少し、自暴自棄に感じる。

先輩Jについても、相変わらず上手に、にぎやかにやっているが、先輩Kと似たような理由からか

先輩Kと同じような状況になっている。

そんな姿を目にする日が、日に日に多くなってきて、私は切なさや寂しさを感じる。

きっと彼らは、自身の居場所や、存在意義を見失いかけているんじゃないかと思う。

彼らは私にとって今でもヒーローだし、いつまでもかっこいいままでいてほしい。

だから、俺が大変だった時彼らが助けてくれたように、今度は俺がヒーローを助けたい。

そう思った。

上司の苦悩

私は、何があるかわからない一度きりの人生だから、やりたいことをやりきるために

あれこれやっている旨を、上司によく話していた。

そのうちに上司も、ステップアップとしての転職の話をしだした。

物事は良いほうに進んでいるように思えた。

しかし、気が付くと上司はテレワークが多くなっていた。

単に、転職活動をしているのかな??と思っていたが、どうやら少し状況が違った。

上司と、周りの管理職の間で、争いあっていたのだ。

きっかけは小さなことだった。しかし、ちょっとした意見の違いから

長年苦楽を共にした仕事仲間と、復旧が難しいほどの対立に発展していた。

私はどちらの内情も聞いていたが、結論は「だれも悪くない」だ。

かつての上司には、生きるには辛すぎる悲劇があった。

それは誰にぶつけることもできない悲しさや苦しみだとおもう。

その状況下では、それまでより大らかになれなかったとしても、誰も責められないだろう。

また、上司の周囲の管理職も、度重なる退職や、無理なプロジェクトのスケジュールにより

日々疲労していた。その状況下では、他人を思いやる気持ちもすり減っていくのも納得である。

つまり「お互い、余裕なんてなかった」。それが結論であると私は思う。

しかしそうはいっても

かつて仲の良かった仲間と上司が争い憎みあうこと上司が誰かに憎しみを向ける姿は、やはり悲しかった。

加えて、日々のやり取りで十分過ぎるほど感じ取れた、上司の言動が以前とは違う形に変容していく様は、私や上司の親しい仲間には、つら過ぎた。

彼のその悲しみや、やり場のない怒りなどを感じ取っていった私たちは、それぞれ複雑な想いに駆られた。

だが私はこう思った。

何の目標もなく、死んでいなかっただけの私に、

命を燃やして毎日を真剣に生きる気持ちを教えてくれたのは、上司だ。

どんなに苦しくても、一生懸命もがいて立ち上がろうとするその姿で教えてくれたのは、上司だ。

だから私は、自分にできることを探そうと、決めた。

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